あっという間の一年

1/1
600人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ

あっという間の一年

 今年の年末年始は、受験生の姉に合わせて祖父母の家に新年のあいさつには行かなかった。  12月31日の夜は家族でテレビを見ながらのんびりと年明けを迎える。  1月1日になった瞬間、スマホの通知音がピコピコと鳴りす。  『あけおめ』や『ことよろ』のスタンプが押されていく。  新年のあいさつが繰り広げられているのだ。ただ、絵里香達のいなくなったグループは、こんな時でもないと鳴らないので、妙に嬉しく感じた。しかも、みんなが節度を守り、一人一度きりのあいさつでそれ以上は入れないので、数分で鳴り止んだ。  卒業式の翌日から鳴り止まないスマホに悩まされたころが懐かしい。  小学生の六年間は、活動範囲が親の目が届くところだった。  それが中学生になった途端、友達と行動することが増え、自分で判断することも増えた。親の目の届かないことも多くなる。友達と遊びに行く範囲も小学生よりは広くなり、駄菓子屋だったお金の使い道が、もう少し大きな物へと変わっていく。  遊びも行動も変われば、揉めごとの種類も変わる。  小学生のころ訳もわからず悪気なく発していた言葉や使っていた言葉も、故意に悪気があって使うと『いじめ』と受け取られることがある。成長と共に学んでいかなくてはならない。  一年間で由奈は色々なことを学んだ。自分の行動や言動には責任があるのだ。  みんながしているから正しい訳ではない。みんなが持っている『手のひらサイズの機械』は、便利なものには違いないが使い方を一歩間違えると取り返しのつかないこともある。  初恋の相手で尊敬する瑞希を見ていると、スマホがちっぽけなアイテムに見えた。  由奈と瑞希の関係も、まだまだ進行中。交換ノートも進行中。  由奈ももちろんカレカノには憧れるが、言葉にしなくても瑞希にとっての一番近い女の子だと、胸を張って言える。今はそれだけで充分だ。  今は、等身大の中学生の自分を楽しみたい――。  三年間という限られた、二度と戻ることのない青春を――。  
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!