18、学生時代最後の試験

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18、学生時代最後の試験

 台覧試合に勝ち、晴れてヴァイスハイトはデーアの、ゲニーはアンジュの揺るがない婚約者になった。あれからゴルト王子とシュタールは魔法団総帥とゲニーにより傀儡魔法が解けて、王子達に魔法を掛けた黒幕も判明した。  ゴルト王子とシュタールに傀儡の魔法をかけたのは、女性問題のスキャンダルで二人を陥れようとした第二側妃に命じられた魔法団の第三部隊副団長だったのが判明した。第二側妃は自分の息子である継承権第二位の王子を王太子にしたくて、現在王位継承権第一位のゴルト王子とその王子を傍で支えるシュタールが邪魔だったらしい。この件が明るみに出て、第二王子は王位継承権を棄権、黒幕の第二側妃は幽閉が決まった。第三部隊副団長は失脚、爵位剥奪となった。 「ゴルト王子とシュタールは第二側妃から腕輪をもらってそれに傀儡の魔法が掛かっていたみたいだ。今後誰からか贈り物をされた際は解析魔法を何十にも施して安全と分かるまで身につけないこととするらしい」 「王子として人を信じすぎるからこんなことが起こるんだよ。王も公にはそう言ってないけど、処罰として隣国へ暫くの間留学させるみたいだよ。これで少し緊張感を持ってくれるといいんだけど。だって未来の我が国の王様になるかもしれないお方だし」  ヴァイスハイトが傀儡の魔法の経緯を話す。ゲニーは王子の行く末を心配した。 「後継者争いって怖いわね。ん? ところで私はヴィーと結婚するとアルメヒティヒ侯爵夫人になるのよね? ゲニーは次男だから家を継ぐことができないけどどうなるの?」 「あ〜言ってなかったっけ? 僕はオラーケル家へ婿養子に入るんだよ。デーアとアンジュが嫁に行ってしまうと他に後継者が居ないオラーケル家は養子を貰わないといけない。だから僕はゲニー・オラーケルになるんだ」 「え! 私アンジュ・アルメヒティヒになりたかったのに! え〜やだやだ! なんか結婚した感じしないよ〜! ゲニーのお嫁さんになった感じしないじゃない!」  ぷくーっと頬を膨らませアンジュは抗議する。 「そんなに僕の苗字になりたかったの? アンジュか〜わい〜! どんな名前の君も僕のお嫁さんなのは変わりないのに」  ゲニーはアンジュを後ろから抱きしめ頬や額にキスの嵐を降らす。キスだけじゃ飽き足らず胸も触ってきて流石にやめてとアンジュに肘鉄を食らわされた。色々と行為があけすけ過ぎて呆れるデーアだが、少し羨ましいと思ってるとヴァイスハイトに見透かされ微笑される。 「デーアが望むなら俺も外でも盛るが?」 「ヴィーはいいの! 貴方の知的な良さが霞むわ! でも……四人しか居ない時は来て欲しい……かも」 「俺が外であんまり羽目を外さないのはストッパーが効かなくなるからだ。ベットの上だってまだこれでも自制している」  あれ以上に愛情を向けてくれるのかとデーアの胸は高鳴る。 「我慢しないで。貴方の全てを受け入れたいわ」 「全てをさらけだしたら君は逃げたくなるかもしれない。まあ逃がすつもりはないが」  ヴァイスハイトはデーアの頬に手を添え仄暗い笑みを浮かべた。デーアはこの笑みが心底好きで、見る度背筋がゾクゾクとし、蜘蛛の巣に囚われ朽ちていく蝶となった気分になる。二人は見つめ合い軽く触れるだけのキスをした。まるで今夜の情事の約束をするかのような口付けだった。 ◇  それから半年、四人は筆記科目や実技の魔法演習を研鑽しあう。大分それぞれ苦手なところを克服し、総合成績は全員学年で五本の指に入った。 「なぁ。勝負しねぇ?」 「勝負?」  ゲニーの発案にアンジュが首を傾げる。 「二週間後に行われる最終試験でこの一年の総合得点が出る。首席(トップ)を誰が取るか、勝負しないか?」 「ゲニー、それは面白そうだな。集大成として申し分ない」 「ただ勝負するのもつまらないよね〜。何かかける?」 「賭け事は良くない気もするけど、良い思い出作りにはなりそうだわ。賛成よ」 「まぁこれは定番かもしれないけど……一度だけ何でも言う事を聞かせる権利、はどうだ?」  ニヤリとゲニーが悪戯に笑う。三人は目配せし合い、微笑んだ。 「決まりだな。言っとくが手加減はしない」 「ふふ、私もよ? この一年で実技も得意になったもの」 「僕も本気出しちゃうよ?」 「あら、それなら私も容赦なく叩き潰せるわ!」  四人はそれぞれの思惑を胸に、更に研鑽に励んだ。二週間はあっという間に過ぎ、試験当日が来た。午前中は筆記試験、午後が実技試験だ。試験結果は放課後になる前、発表されることになっている。  卒業前の最終試験である今回の筆記試験の範囲は一年から六年までの習った全範囲で膨大な量だった。  無事筆記試験が終わり、四人はテラスで昼食をとる。点数を目算すると、ヴァイスハイト、次にデーア、そしてゲニーとアンジュが同点という順となった。
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