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第22話 聞け、学べ、先を読め!
大見得を切ったものの、ウォルノは防戦一方だった。
ヤクシャの動きに合わせて立ち回り、ビスクドール達は遠近問わず詰め寄る。
タイミングをずらしながら、味方に当たらぬよう、ビスクドールたちが剣を振り下ろして迫ってくる。
回避をした着地先を、虎視眈々とライフルで撃ち抜こうとする後詰め。
「ゴブ・オーグよりビスクドールズ各機へ。
攻勢の手を緩めるな、敵の反射神経は超常だ。
だが互いの攻め手を瞬時に汲み取れる我々に誤射や連携ミスはない!」
「了解」
「了解」
「りょうかい」
「りょうかい」
まるで無機質な陶器のように、感情のない返答だ。
「今度はこっちから行かせてもらうぜ!」
一番手前でセイバーを構えている相手に、右バスタークロー内のビームガンを構える。
遅ェ!当たったぜ!
と思ったのも束の間、別機体がシールドで防御に回ると同時に奥の機体から既に射撃が飛んでくる。
何ィ!?カバーと同時に攻撃かよ……味方のケアを読み取ったってワケか。
敵が順々に撃ってくる様を、尻尾と左手のワイヤーを器用に地面に突き刺して着実に一つづつ避ける。
「組織的な連携じゃねェか、敬意を表するぜ!」
……ん?さっきの射撃は、全員がワンテンポづつズレてた。
照準も若干甘い。
もしかして……やってみるかッ!
ウォルノは敵を凝視したまま、一歩後ずさる。
「!!!!!いたぜ~~~ェ、てめぇ!右奥のッッッ!」
突如右奥の一体へ、右手→左腰の順にワイヤーを使ってジグザグに接近する。
敵も咄嗟に反応しセイバーを振り下ろす!
「そう……来ると思ったぜ」
敵の間合いに入る前に、事前に仕掛けた尻尾のワイヤーテールを巻き取る。
これにより、即座に2機体半分後退する。
「俺が後ずさった時、テメェが一番反応速度が遅かった……」
9機順々にビスクドールとゴブ・オーグが襲いかかる。
ウォルノはその順番が分かっていたかの様に、攻撃をしてくる敵の攻撃を回避する。
「ハン!互いの思考が分かる以上、必ず射撃の直線上には敵は来ねえ!
誤射が無いからこそ、射線は限られる」
敵の射線軸を、他の機体で遮りながら移動する。
「更にさっき俺に仕掛け返してきた時、全員の反応に微妙に誤差があったッッ!
つまり、互いを理解できてても、反応の差が生まれちまう!」
接近戦を仕掛けてきた5機を、殴る蹴るのカウンターで順々に薙ぎ倒す。
「それは逆にテンポをずらした着地狩りや、殺陣を可能にする。
だがなァ~~~~、規則的過ぎるンだよ!」
前方80度内の視界からビスクドール達の射撃が来る。
これを、早めの4拍子で左右ランダムにブーストを用いて機体を振り、回避・接近する。
「反応誤差が個人に依存するってこたァ、必ず素早いやつから順々に一定規則で襲ってくるッッッ!」
ライフルを撃たれる度に前転とブーストを織り交ぜた回避→カウンターでバスタークロー内部のライフル、のコンビネーションを御見舞した。
「しかも味方が死ねば、その恐怖も伝染するよなァァ!
そうなりゃ、あとは攻撃順のパズルだ……俺の白星確定っちゅー訳よ」
リズムよく敵を捌き切り、ウォルノは口笛を吹いてご満悦だ。
「『組織的ではあっても、機械的でしかない』
それがテメーらの敗因だぜ」
ビスクドールズを退けて、残りは3機の小隊長機だ。
「最新機がこうも容易く!?この犬っころがああァァ!」
「ここまでは想定内!ラストはてめぇらだァァッッ!」
1機のゴブ・オーグに近づき、一閃!
剣を抜かれるより先に、両腕を切り落とした。
「そいつも想定内」
ウォルノがニヤリとした刹那、ゴブ・オーグ背部バーニアから隠し腕2本が斬りかかる。
「……こいつァ想定外」
表情が固まったまま首を傾げ、振り下ろされるセイバーを弾き、胸部を一突きした。
そのまま上半身を捻り、ライフルを撃つ体勢に入っていた2機の胴をビームガンで貫く。
「ッぶねー。間一髪!」
ウォルノの周囲には不気味なビスクドールが、糸が切れたマリオネットのように生気を失い散らばっていた。
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