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エピローグ
「瑞樹くん!」
野々花は改札をぬけると、壁際に立つ瑞樹に声を出した。
「おはよう」
瑞樹は白い息を吐きながら、笑顔を見せている。
野々花はレインブーツを鳴らして、瑞樹の元に駆け寄った。
昨日はこの地域には珍しく雪が降り、いよいよ寒さも大詰めを迎えている。
この時期を越えれば、あとは暖かい日差しの春の足音も聞こえはじめるだろう。
幸せをかみしめたクリスマスから一年と少しが過ぎた今日は、野々花と瑞樹が受験した大学の合格発表の日だ。
合否の結果はホームページにも掲載されるが、二人は一緒に発表を見ようと約束して、掲示が貼りだされるキャンパスまでやってきた。
「もう、ドキドキして昨日は全然眠れなかったよ……」
野々花は雪が解けてシャーベット状になった歩道を、キュッキュと足を踏みしめて歩く。
「俺も。しかも朝一で、母親が合否結果のページ開こうとしてたから、慌ててストップした」
「え!? もう結果、出てた?」
「ううん。時間になるまでは表示されないみたい」
「そっかぁ。お母さんも、相当気になってるんだね」
「まあね」
二人は顔を見合わせるとぷっと吹き出した。
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