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ファーストコンタクト
「もう、サイアク。こんな日に、一人で片づけ当番だなんて」
鈴村 野々花は、どんよりとした分厚い曇り空を見上げると、バドミントン部の片づけを終えた体育館の入り口を飛び出した。
他の部員は雨が降る前にと、先に帰ってしまっている。
今日は曇りのまま天気がもってくれるかと思っていたが、やはり梅雨真っ只中のこの時期に、そんな期待はあっさり裏切られた。
「折り畳み傘って、部室に置いてたよね?」
ごちゃごちゃとしたバドミントン部の自分のロッカーを思い出しながら、足早にグラウンドの横を駆け抜ける。
ラケットカバーの紐をぐっと背中にまで回し、大きく足を出すとウェアの裾がパタパタと風になびいて音をたてた。
運動部の部室棟は、二階建てのプレハブの建物で、グラウンドを挟んで校舎の向かい側に建っている。
「速攻で着替えて、傘持って出る! よし!」
野々花は自分自身に確認すると、ボブの髪を揺らしながら鉄製の階段を駆け上がった。
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