女囚看守人の涙

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ケイコが入牢してから半年、すでに彼女は三度懲罰房に入っている。 気性の激しい女囚たちの中でもケイコの荒々しさは怖いほどだ。 あと三日で懲罰房の期限が終わるのだが、出てすぐに何かやりかねない。 他の看守たちが恐れる中、私はケイコになぜか引きつけられ自分から彼女の担当になりたいと所長に願い出て許可された。そして彼女の経歴を読んでいるうちにその理由が分かった。 ケイコがまだ五〜六だった頃、私たちの家は隣同士だった。そして十七歳の私をレイプした男の娘だった。 あの後、すぐに彼らは引っ越して行き、私は誰にも言えないまま恐怖を胸に抱えて生きてきた。 ケイコが犯した罪は「父親殺し」だった。推測するしかないがあの男は娘さえレイプしていたのかも知れない。 調書をしまって私はケイコがいる房の前に来て息を呑んだ。 ケイコが自分の服を割いて紐状にし、房の下の食事を入れる小さなドアと自分の首に巻きつけ体を回転させてねじるように首を絞めている。絞め始めたばかりのようでまだ意識があり、激しい目力で私を睨んでいる。 「あなたの父親は十七歳の私をレイプしたの。殺してくれてありがとう」 ケイコの目が笑った。そしてかすれるような声で、 「殺したのに、毎日毎日出てきやがるんだ。だから、死んであの世でもう一度殺してやる」 体をまた回転させて紐がキツく首に巻き付いた。私は房から出て運動場で陽の光を浴びた。 もうすぐ彼女は絶命するだろう。 足下の雑草が朝露で光った。 私が流している涙はなんの涙なのだろう。
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