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もう家族になったから私なんかどうでもいいと言わんばかりの態度。そんなところも、私はなぜか気に入っていて「可愛いね」なんてメロメロになって撫で回しているのだ。
「受験したくないならしなくてもいいんだよ」
サンタのご飯を買ってきたお母さんが、頬を赤らめながら私を見ていた。はぁっと吐き出した息は、真っ白に染まっていて雪みたいだ。
お母さんに何かを言ったわけでもないのに。帰ってきた時に出てきた言葉が、受験しなくていいよだなんて。
「するよ」
「幸せに生きてくれるなら、親はなんだっていいんだから」
「うん」
私の心の中を覗かれたみたいで、恥ずかしくなったけど。やっぱりお母さんはお母さんで。未だに、受験勉強をがんばろう! という気にはならないけど……ちょっとくらいがんばってみようかな、くらいにはなってる。
やりたいことを大学で探したっていいわけだし。それなら、汎用性の高い学部に行くべきだよね。研究とかは得意じゃないから文系かな。
「好きなことなんてゆっくり見つければいいのよ」
「わかってるよ」
「わんっ!」
サンタがまるで賛成です! みたいな鳴き方をして部屋の中を駆け始める。
お母さんの優しい言葉に、心がぽかぽかとしてきた。サンタはお母さんの足元にじゃれついていて、お母さんも頬を緩めていた。
そういえば、私を見てるときもあんな顔だった。どんな私でもいいよ、ってお母さんの顔はいつも言ってた。
<了>
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