全ての始まり

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 私は母に連れられ、隔離された集落へと着いた。  目隠しをさせられていたので、道程は全く分からない。母からは「これは決まりだから」と言われた。  集落に到着し、目隠しが外される。集落に到着をすると、私は何人かの大人の女性達に案内され、この集落に一軒しかないお寺に案内される。  やたらと冷たい空気を感じる中、お寺で一夜を過ごした。  朝になったら、女性達から今後の集落での生活について、説明を受けた。母が見当たらないので、尋ねてみたら、もうここにはいない。ここに貴方を迎えに来る事もない。と言われた。  母とは会う事はもう叶わない。  私と母との記憶と想い出はここで終了したのだ。  自分に与えられた力に非があった訳ではない。邪悪な存在から狙われるという理由で。  理不尽極まりないよね。  どうして、母と離れ離れにならなければいけないのか。  そんなやり切れない気持ちの中、私の外の世界から隔離された集落での生活の時間は、容赦なく始まってしまったのだ。  ここには女性しかいなかった。男性は別の集落で暮らしているとのこと。ただ、理由は分からないが、このような力を持つのは女性が殆どで、男性は滅多にいないと言われた。  とくに苦しい生活を送っている訳ではなかった。共同生活をしているだけに過ぎない。周りの大人の人達が勉強を教えてくれた。後は、炊事、洗濯、清掃を皆と協力して行っていくだけだ。  この集落は一つの共同体みたいなものだ。皆で支え合いながら、生活を送っていく。裕福ではないが、生きていくには困らない。  考えようによっては、皆と上手くやることが出来れば、ストレスを抱える事はないので、楽な日々ではあるし、生活そのものは悪くない。  平穏な日々を過ごすことが出来る訳だ。  また、ここの気候は一年を通して、暑さと言うものが存在しない。  春、秋、冬と季節が流れている感じだ。春と秋は短い。冬は厳しくて長い。この国にこんな所があるとは思わなかった。  秘境の地と言った感じだ。  冬は辺り一帯が真っ白に染まる。とにかく極寒の地なのだ。  寒さに耐えながら、ここでの生活に慣れていき、平穏な年月が流れ、私は成長した。身体も大きくなった。  そして、外の世界へ戻りたい気持ちも、成長と共に大きくなる。  私は集落を出たい旨を皆に告げた。 「想像を絶する修行を積む必要がある。覚悟はあるのか」  と問われる。  想い出となってしまった母と過ごした世界。母に会いたいと言う気持ちは無くなってしまったが、外の世界を少しでも経験した者にとって、ここは窮屈すぎる。  私は迷わずに返事をした。  お寺に連れて行かれ、再度、覚悟を問われる。  かなり厳しい修行で、クリア出来た者は、数人しかいないとのこと。殆どの者が途中で断念して、集落で一生を過ごすことを選ぶことになると言われた。  私としては、ここで、退屈で窮屈な一生を過ごすつもりはない。  私の修行の日々が始まることになった。
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