プロローグ

1/1
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

プロローグ

 私の名前は樹 燐(いつき りん)。霊能関係を生業としている。  黒いコートに適当なシャツ、黒いミニスカート……。年中この格好だから、季節によっては怪しいかも。  ルックスも良い方だけど、目つきの悪さは勘弁してね。髪の毛は緑色に染めているけど、特に問題はないよね。  霊能力というのかな。自分でも理解しきれない変な力を持っているからかもね。  人の精神に入り込んで、その人を崩壊させる邪悪な存在と戦うのが私の仕事。  ガチだよ。  精神を病んでしまった人と、邪悪な物に取りつかれてしまった人との区別はつくからね。  前者の場合は病院を勧めるし、後者の場合はしっかりと払ってあげる。  勿論、それなりの報酬は頂くよ。  こっちは命懸けの戦いをすることになるから。  この商売にボランティアは成立しない。私の命を安く見積もられては困る。こっちも命が懸かっているからね。  中には、素晴らしい思想を持っていて、無料奉仕をしている人もいるけど、私には理解できない世界観だな。  私は、特に営業はしていない。  お祓いの話が舞い込んでくるのを待つだけだ。  この仕事をしている人達の中には、自分から売り込む人もいるけど、詐欺の可能性があるから気を付けてね。  命を削る仕事の安売りはしない。  そこを理解することだよ。  だからと言って、困っている人を簡単に見捨てたりはしない。  報酬の分割払いには応じるから、遠慮なく相談をしてね。  邪悪な存在に取り憑かれたまま放置しておくと、必ず惨劇を招くことになるから。  奴らは徹底的に取り憑いた人を破壊するだけでなく、周りの人達を巻き込み、より大きな悲劇や惨劇を創り上げないと気が済まないからね。  そうなる前に、私の所に依頼が来ることを望んでいるよ。  手遅れになってしまうケースの方が多いからね。  思わず笑みが毀れてしまった。  最も、最初から邪悪な存在と戦える状態ではなかった。小さい頃は、邪悪な力を感じ取ることは出来たけど、見えないふりをして怯えているだけだった。  死に物狂いの修行をして、今に至った訳だからね。  街中を宛もなく歩いていたら、身体を突き刺すような冷たい風が吹きつけてきて、立ち止まった瞬間に、ふと昔の事が蘇ってくる。  辛くも恐怖と言う見えない力に抗った日々が……。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!