やっぱり好きだった

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やっぱり好きだった

 3本の向日葵。  花言葉は愛の告白。  やっぱり紺野君が好きだった。  これを持って会いに行こう。  やっぱり、私は紺野くんが好き。  魔法の呪文みたいに私を変えてくれたあの言葉。  思い出したよ。  私はずっと好きだった。  紺野くんに一目惚れをして。  紺野くんに告白をされた。  紺野くんも一輪の向日葵をくれた。  一目惚れ。  そういうことでいいんだよね?  わたしだけの密かな愛だったけれど、マフラーが私たちを繋いでくれて。  それからも多分ずっと。  お日様みたいな紺野君が私はずっと好きだった。今も、変わらず好き。  思い出したよ。  あの時の魔法の言葉。 『俯いてないでさ。そうやって顔あげなよ。向日葵みたいに可愛い顔してんだからさ。』  勇気をくれたあの言葉。 『向日葵ってさ、知ってる?太陽の方をいつも向いてるんだってさ。だからお日様といつも向かいあわせなの。』  あれからずっと、わたしは紺野くんから目が離せないの。  お日様みたいにキラキラ輝いて私を照らしてくれる紺野くんが私の方を向いていてくれてる。  時々不安でたまらなかったの…。  ちゃんとこっちをみてくれてるかな、って。  だからわたしはちゃんとあなたの目に映ってるのかな?って不安になってた。あなたの視線を独占したいばっかりに、飾り立てようとした。他に目が行ってほしくなくて。  もっと綺麗に咲き誇りたくて欲をだして。  どう飾り立てたって向日葵は向日葵、真っ赤なバラなんかにはなれないのにね。  向日葵みたいに可愛いと言ってくれたのに、欲をだしたわたしは向日葵でいることを忘れ真っ赤なバラのように私を飾り立てようとした。  だけどいつも変わらずそばでちゃんとみていてくれた。あたたかいお日様が向日葵の私を…。  紺野くんが稽古をしているところに覗きに行った。  3本の向日葵を持って。  体育館の入り口に向日葵を持って近づくと、紺野くんが向こうから走ってきた。  片手に向日葵を持っていた私を紺野くんがギュッと抱き締めた。 「ごめんね、後でなんて、待てなかった。やっぱり私は紺野くんが好き。 五十嵐くんとは昨日ちゃんとさよならしたの。」  なぜか涙か出た。悲しい涙じゃない。 大好きで仕方がないっていう気持ちが涙と一緒に溢れでてきた。今までからだの中にたまってた想いと一緒に溢れてきた。 「ごめんね、沢井さん、俺がちゃんと気持ちをつたえてなかったから。俺もずっと沢井さんが好きだよ。だから泣かないで…」  みんなの見てる前で、いつの間にか私たちはそうやって抱き合った。  あっという間に人だかりができた。  あわてて近づいてきた板倉さんは興奮してなにかを叫んでた。 「紺野くん!あたしにあんな風に言ったくせに!」  振り返って板倉さんを見ると、ギプスをして歩けなかったはずの足を床につき、ここまであわてて走ってきた。 「あれ?走ってる!?普通に歩けてるんじゃん…」  誰かがそう呟いた。 「ほんとだ。板倉さん、歩けてるよ!よかったね!なおった!治ってるよ。足が治ってる。先生!駒田先生!板倉さんが歩けたよ」  剣道部員たちはみんなで大喜びだ。  みんなは大会に間に合うって、大喜びだった。板倉さんが悔しそうにしていたのなんか、みんな気づいてない。  うつむきながら悔しそうにしてるのに気づいたのは、紺野くんと私だけ。  事情を知ってる私たちだけ…。
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