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澁澤は、懐からなにか取り出し、俺の目線のなかに入れてくる。
「日本での生活歴がある事」
写真だった。女の顔写真。
6人ぶんの顔が並ぶ。
いずれも死ぬまで忘れる事の出来ない顔、顔、顔。
俺の人生に深く刻み込まれた女たちの人相。
記憶の中のものより少し老けてて、化粧けが剥ぎ取られているけど、それでもすぐに誰かは分かる。
その顔は、ことごとく心に生傷状に刻みこまれている。
「そして、全員が、あなたと一時期、強い絆で結ばれていた…………いわゆる元カノである事」
長い時間をかけて分厚く封じ込めてきた記憶の蓋が、あっさりと砕けて口を開ける。
中からドロリとしたトラウマが溢れ出てくる。
「……新城さん、あなた、この女たちになにを吹き込んだのですか?」
はっきりと、得体の知れないこの男のエリート顔に、悪意が浮かんでいる。
「…………まさか、あなたが裏で糸を引いてるんじゃないですよね?」
俺は男の顔を黙って見つめ返した。
そう疑うのも無理はない。そう疑うのがむしろ自然だ。
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