378人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
◆◆
「なにか、心当たりがあるはずです。彼女たちに脱獄を決意させるような何かが」
そんなもの、無い。
付き合いの1番古い相手にいたっては中学校時代の元カノなのだ。
相手は俺の事なんて記憶の片隅にも覚えていない。そう思っていた。
首を横に振るばかりの俺に業を煮やしたのか、澁澤は急に表情を崩して侮蔑の色を浮かべる。
「あなた、この女たち全員と肉体関係にあったんでしょ?」
思わず耳を疑った。
「どうなんです、大量殺人をやらかすような女のセックスって、普通と違うんですか?」
とても、公的機関に属する人間の言葉とは思えない。
こいつ、一体なんなんだ。
怒りに顔色が変わっていたのかも知れない。
「あれ、怒っちゃいました?」
「あなた、本当に警察官なんですか?なんの権利があって俺を拘束してるんです?」
「あ、そうだ。申し遅れました。わたし、日本中央情報局 東京支部局長の澁澤栄治と申します」
………中央情報局?
「………通称JCIA。実は自衛隊よりも以前から存在する、古参の政府組織なのですよ」
名刺いります?そんな申し出にまた首を振る。
ただ、その名刺の字面の禍々しさだけが目の裏にへばりついていた。
「まぁ、あれです。アメリカのCIAの日本版だと思ってください。あ、わたしに与えられてる権限ですが、法務大臣と警視総監の中間ぐらいだと認識していただけたら分かりやすいかと」
日本にもスパイがいて、密かに他国に送り込んでるって噂はネットで目にした事がある。某国でスパイ容疑の日本人が拘束されたってニュースもたまに目にする。
でも、JCIA?CIAの日本版?まるでスパイ映画の世界だ。
「その、007さんがなんで人の過去に首を突っこむんですか?俺には何の関係もないじゃないですか」
「色々と誤解があるみたいだけど、まぁ良いです。へえ、何の関係も無いと?あなたと深い関係にあった凶悪犯6人がほとんど同時に脱獄したというのに?」
再び6枚の顔写真を突きつけられて息がつまる。
最初のコメントを投稿しよう!