再会

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再会

 拓真は雫月と待ち合わせをして、お台場で開催されるクラシックカーフェスティバルに向かった。  国産車だけでなく、外国車も多く参加する事で有名なこのフェスティバルは、もう十二回目の開催らしい。  土日で開催されているが、今日は二日目のもう昼を回った頃だ。  他の会場でも似たようなイベントは開催されているが、ここで行われるのが一番車種が多いことで有名だ。  そして朝方までの雨は止んだが、また降ってきそうな顔をしている空を見上げ傘を持って会場へと向かった。 「雫月、どこから見る?」 「うーん、端から順番かな」  拓真から見ても、雫月は目を輝かせて、嬉しそうに会場を見渡している。  参加車リストに目を通しながら、見落としがないように考えているようだ。  拓真は車は好きだが、雫月には到底及ばないのは会話をしていても痛感していた。  クラシックカーになると特にわからない。だから、雫月をこのフェスティバルに誘った時に、一応、参加車の確認をしておいた。  クラッシックカーフェスティバルとはいえ、二十年前くらいの車もあるから、今でも走っているのを見る車もチラホラと展示してある。   「あっ、フィガロがある。かわいいなぁ」 「VIVIOもある。拓真さん、見て。可愛い顔してない?」 「あっ、バルケッタがある!拓真さん、これ三十年くらい前の車なんですよ?見えなくないですか?私、この流線型が好きで、このドアハンドルも面白くて好きなんです」  眼の前に置かれた真っ赤なイタリア車は幌タイプのオープンカーで、今はオープンの状態になっている。  見ていると、天気が心配になったのか車のオーナーが屋根を閉じ始めた。  雫月はそれを横から真剣に見ていて、このまま雨が降らなきゃいいなと考えながら拓真は空を見上げた。 「雫月、車は逃げてかないぞ。そんなに急ぐな」  ずっと奥の方に、あまり見る事のないクラシックカーが並んでいる。  90年くらい前の外国車だが、それらにはナンバーが付いているから登録されていて普通に道を走ることができる車だ。  そんな変わった車に目を取られている間に、拓真は雫月の姿を見失ってしまった。 「雫月?どこだ?」  ポツポツとコンクリートに水玉の模様が一つ二つとでき始め、だんだんとその数が多くなる。  そしてそれはすぐに大粒の雨へと変わっていった。 「雫月の傘、ここにあるんだけどな」
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