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であい
仕事終えての帰り道、どこからか聞こえる微かな鳴き声が気になりその声を辿っていくと、歩道から少し入った公園の入口の目立つところに小さなクレートが置かれていた。
鳴き声はそこからだった、そっとクレートの奥を覗くと、『クゥクゥ』いう真っ黒な小さな物体、プルプルと動くしっぽのようなもの。
向きを変えたのか、顔がみえた。「子犬だぁ!」真っ暗なクレートの中でくりっとした瞳が見えた。からだも真っ黒ではなく白と茶色の子犬だった。
その子は小刻みにふるえていた。中にいるのは小さなまん丸な子犬、いや小熊?そんな訳はないが、クマのぬいぐるみのように見えたのも確か。
敷かれていたであろう、毛布は蹴飛ばされて冷めたプラスチックの床が剥き出しで、その子犬は寒さにふるえていた。
雑種だろうか?けど、やはりどこか小熊のようなフォルム
飼い主さんがクレートを置いて、どこかに行ってるのだろうと・・・
ただ、なんとなく気になったのですぐに離れず、しばらくは少し離れたところから様子を見ていた。それでも、『クゥクゥ』『クゥクゥ』とずっと鳴いているので、戻ってまた覗きに行った。
もしかして誰かに捨てられたのかな・・・今時こんな風に置き去りにされる子犬なんているのだろうか?
よくみると後ろに箱が置いてあったので失礼して開けて見せてもらうと、中にはパピー用のフードとトイレシートが数枚、そしておもちゃの小さなぬいぐるみ。
「やっぱ、こいつは捨てられたな」もしそうだとしたら、こんな寒いところに置き去りにするなんて無茶苦茶じゃないか。
ただ、偏見かもしれないが捨てられている?とは思えないぐらい、安心感のあるころっとした体型。
それでも、やっぱり信じがたく疑問を感じながらも、気になってクレートに上着を掛けて飼い主を待っていたが、やはりどうにも現れない。
「お前ほんとうに捨てられたのか?」と指を網の隙間から入れると、『クゥクゥ』泣いていたそいつは私の指をペロペロと舐めまくる。
こいつ、めちゃくちゃ可愛いじゃないか、愛くるしい顔だけどからだは寒そうにブルブル震えていたので、クレートから出してわたしの上着の中にいれて温めてやるとすこし、温まり落ち着いたのか、ふるえはおさまり、すやすやと寝初めた。
もし捨て犬なら、このまま連れて帰るのは構わないのだが、我が家にはすでに9歳のフレンチブルドッグと2歳のサルーキがいる。
はたして、今日いきなり連れて帰っても大丈夫だろうか?ただ、このままにしとおくと、こいつは凍えてしまうからな....
とにかく近くの警察に届けに行こう、そしてそのまま警察に預けようかと思ったが・・こういう犬は施設に入れられるもしくは、そのうち処分されるかも知れないし。
それを考えるといたたまれない。ただ、今はマイクロチップが埋めているはずだから、すぐに飼い主がわかるだろうから、けどそんな犬を置き去りにするわけないよな....
それなら、たとえ家の子たちと仲良くできなくても、寂しく寒いところの施設にいるよりかはマシだろうさ、我が家なら3食昼寝付きだからなぁ
色々、考えていると、お巡りさんが「拾得物になりますが、明日いったん施設にあずけます」・・・やっぱりか....
いや!「私が落とし主が現れるまでは引き取ります」とお願いと言うか、要望と言うか半ば強引に「お願いします」と言ってしまった。「当然飼い主さんが現れたら引き取って下さい」とも言った。
お巡りさんはしばらく考えて・・拾得物の期限は3か月です、とか色々言っていたが、胸の中にいるこいつをまた寂しい無機質な檻にいれるのは忍びない、もう渡せないよなと思い.. ..色々書類を書き、家に連れて帰る事にした。
家に帰ると、ねぇチャンはびっくりしていたが、意外とあっさり理解してくれた。(奥様の事は犬たちの前ではねぇチャンと呼んでいる)
とりあえずは、ワクチンを打っているかどうかもわからないし、いきなりのご対面は無理があるので、先住犬の兄ちゃんたちには気づかれない様にとりあえず2階に退避した。
先住犬たちはほとんどを1階のリビングで過ごす、2階には基本連れては行かない。
2階でごそごそとジヴァが子犬のときのケージを出してきて、こいつのハウスを作る。
ジヴァはサルーキで大型犬、細いのでそれほど大きくは見えないが、すぐ手足が長くなり体高も高くなりパピーの時のケージはすぐに使わなくなった。
けど、こいつには十分すぎる広さだ、中で遠足が出来るぐらいの広さだと思う。
よくよく見ても犬種はわからない、月齢も何か月だろうか?柴犬のようなポメラニアンのような小熊のような間違いなく雑種だろう。
次の休みに獣医さんにみてもらおう
ちいさなおちんちんがあるから男の子なのはわかる、よかったな我が家はみんな男の子だからな...
さて、いつまでも「こいつ」と呼ぶのは可哀そうだから名前がいるよな、お前はなんて名前だ?なんて呼ばれていたんだ?
名前は何にするかな?もっふぃでジヴァだからな今度は和風にするか?コロか?熊だから、ベア?いや....やっぱり第一印象のころっとした身体で『コロ』
よし、単純だけど、ねぇチャンの承認がとれれば『コロ』にしよう、もっふぃ、ジヴァ、コロ、・・うん、いいかもな....からだもころころだからなコロちゃんて顔してるしな。
もう少ししたら、ご飯にしようなコロ、とりあえず、そのまま寝てなさいよ、下にいってくるからね。
1階におりていくと、やはり臭いがついているのか、2人が私の服の臭いを嗅ぎまくる、「どうした?何かに匂うか?友達の臭いか?」そのうち、ご対面してやるから待ちなさい。
箱に入ってたフードは2kg、コロの体重は1kgぐらいだからあげる量は1日60gだとしたらちょうど1ヶ月分か?
コロはなんとなくたぶん、中型犬だろうからすぐに、体重は増えるだろうし1ヶ月は持たないよな。
飼い主さんはフード無くなる頃に迎えにくるとか?そんな事はないよな。
我が家では3食にしているので、その総重量を分割してあげる事にする。
お湯でし少しふやかしてると、自分のご飯だと、もっふぃが覗きにくる、敏感(神経質)なジヴァはいつもと違う匂いだと察知している。
ジヴァは私の臭いと普段と違うご飯の臭いで何かを感じたのか、自分のご飯どころじゃなくリビングのドアをガリガリとして2階に連れていけとせがむ
やっぱりいつもと違う何かを感じとっている、敏感なジヴァ。
もっふぃは早く自分のご飯が欲しいと飛び跳ねて騒いでる、いつものルーティンだ。
ジヴァは騙せそうにないから、2階で隔離出来るのは時間のもんだいだな、仕方がないご飯のあとお腹が落ち着いたら、ご対面としよう。
うちの2人は凶暴ではないが、人間も犬も大好き他の犬に興味がありすぎて困ってしまう、コロが怖がらなければいいが
なんとなく、想像はつくのだが、たぶん、もっふぃはスンスン嗅ぎまくる、すぐ興奮してよだれもながす。
ジヴァを迎え入れたときもそうだった、興奮しまくり目は充血してはぁはぁ息が荒くなりそれでもずっと興味津々。
ジヴァはつかず離れずを繰り返して、少しビビりながら近づくんだろうな、興味はあるけど臆病だからそんな感じだよね
ねぇチャンが下のリビングでもっふぃたちに餌をあげている間に私が2階のコロに餌をあげる。
お腹が減っていたのだろう、コロは初めての家にも関わらず、気にもせず餌にがっつく。
「飲み込まず、よく噛めよ」といっても所詮は無理なはなしでもっふぃと同じだ。
食べたらお水も飲んで、しばらく大人しくしてなさいよ、食べてすぐ暴れると胃捻転なんかになったら大変だからな・・
我が家では、食後2時間はゆっくり休むというのがルール。
「また、来るからな」
しばらくして様子をみに来るとまだ寝ていた、置いていたトイレにオシッコもしていたので、ちゃんと躾られている。
クレートに敷いていた毛布を置いたベッドの上で、スヤスヤと寝ている。
「やっぱり子犬はたまらなく可愛い」たまにブルブルとふるえる姿がたまらなく、イイ!
ねぇチャンも気になって見に来た、
「ほら、めっちゃ可愛いよな」
「ほんま、もっふぃが来た時みたいやね」
「色はちがうけど、コロッとして大物感が漂ってる」
「そやねん、こいつは大物になるかも」
「コロが起きたら、下で兄ちゃんたちとご対面しょうな」
お腹も落ち着いたころにコロを抱っこして1階にいく、ドアをあけ後ろ向きでそーっと入っていくが
もっふぃもジヴァも寝ていたがすぐに飛び起き、もっふぃが足元で吠える、ジヴァは立ち上がり、コロのお尻を嗅いでいる。
「待て!」と言ってもいう事は聞かない状態、すでにわくわく興奮状態。それでも無理やり待たせて、ゆっくり腕で囲いながらコロを床に下ろす。
コロは緊張か、恐怖か、ふるえている、その場でふるえながらじっとしている。
静止をふりきり、もっふぃが手当たり次第嗅ぎまくる、ジヴァは少し離れて、なんだこいつはという顔で様子をうかがう
ジヴァの時もそうだったが、もっふぃはしつこいから、しまいにはコロに吠えられるに違いない。
ほんと、もっふぃはやっかいだ
やっぱりしつこいもっふぃが嫌でコロが止めて欲しいと『ウオン』『ウオン』と低い声で吠える
びっくりするジヴァ、それでもお構いなしのもっふぃ
まぁ初めはこんな感じだろうなぁ......
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