雪鬼

5/6
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 人間と警察犬による捜索は数週間に及んだ。校庭の裏手の山狩り、付近の河川、しらみつぶしの捜索が続いたが妹は見つからなかった。わたしはきっと見つからないだろうと思っていた。人間がいくら探したところで、あんな化け物に連れ去られた妹を見つけられるはずがない。そう思っていた。  捜索隊の人たちの顔に疲労と諦めの色が日に日に濃くなっていった。そしてこれっぽっちの手掛かりすら得られないまま、捜索は打ち切られた。  別人のようにげっそりやつれ果ててしまった父。それでも父はわたしを責めたりしなかったが、母は何度もわたしを打った。打たれても仕方がないと思った。    あの時、わたしが莉音の手をしっかり捕まえて離さなかったなら、莉音はこちらに留まっていられたのかもしれない。でもわたしは手を離してしまった。離さないと自分も連れて行かれてしまう。振り向いた雪鬼がわたしを見て笑った時に、恐怖に震えながら、妹は見捨てても自分は助かりたい、わたしの中で無意識にせよそんな打算が働いたのだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!