第7話(2)決勝で会いましょう

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第7話(2)決勝で会いましょう

「なにを驚いているのよ?」 「い、伊吹玲央奈! ど、どうしてここに?」 「どうしてって……貴女をこの大会に誘ったのは私でしょう?」 「あ、ああ、そういえばそうじゃったな……」 「……とりあえずはおめでとう」 「なにがじゃ?」 「なにがって……決勝へ進出したことよ」 「ああ、まあ、なんてことはないわい」  竜子はサイドテールをくるくるとさせる。 「……大分手こずっていたじゃないの」  玲央奈が冷ややかな視線を向けてくる。 「な⁉ わ、分かるのか⁉」 「分かるもなにも、見てたわよ」 「み、見てたのか⁉」 「ええ」 「な、何故⁉」 「何故って……それは次に当たるかもしれない相手の対局は見るでしょう」 「次に当たる?」 「はあああ~」 「お、思いっきりため息をつくでない!」 「貴女って、自分のこと以外にはほとんど興味が無いのね……」 「いやあ……」  竜子が自らの後頭部を抑える。 「褒めてないわよ」 「ああ、そうなのか……」 「そうよ」  玲央奈が頷く。 「そ、それだけ自分のことに集中しているということじゃ」 「良い様に言わないでよ」 「いやいや、本当のことじゃ」 「まあ良いわ。次の準決勝第二試合、しっかりと見ていなさい」 「なんでじゃ?」 「!」  玲央奈がズッコケそうになる。 「よく掃除してあるが、お手洗いでコケたら汚いぞ?」 「だ、誰のせいでコケそうになったと思ってんのよ⁉」 「ん?」 「と、とにかく、第二試合よ」 「第二試合がどうかしたのか?」 「察しが悪いわね……私が出るのよ」 「ええっ⁉」 「こっちがええっ⁉だわ!」 「お、お主も出とったんじゃな……」 「誘った時に言ったでしょう!」 「そ、そういえば……」  竜子は思い出す。 「まったく……」 「さ、さすがじゃな……」 「え?」 「しっかりと決勝に進出しているとは……」 「当たり前でしょう。私のことを誰だと思っているの?」 「将来の名人か?」  竜子の言葉に玲央奈がフッと笑う。 「なんだ、ちゃんと憶えているんじゃないの……」 「なかなかにインパクトがあったからのう」 「ふふふっ……」 「そういえば聞きたいことがあるんじゃが……」 「なによ?」 「竜王になるにはどうすれば良いんじゃ?」  玲央奈が目を丸くする。 「! ほ、本気で言っているの?」 「ああ、本気も本気じゃ」 「そ、そうなの……」 「そうじゃ」 「そうね……まずは……」 「まずは?」 「この大会で優勝することよ」 「!」 「分かった?」 「分かった、簡単じゃな」 「簡単じゃないわよ」 「何故じゃ?」 「私が優勝するからよ」 「! それはそれは言ってくれるのう……」  竜子が笑みを浮かべる。 「私も名人を目指しているの。だからこんなところで負けていられないのよ」 「ふむ……」  竜子が腕を組む。 「決勝で待っていなさい。貴女も倒して、私は先に行くから」 「はっ、返り討ちにしてくれるわ」 「ふっ……」 「しかし……随分とワシにこだわるのう……ワシが魅力的じゃからか?」  竜子が首を傾げる。 「……ある意味ではそうね」 「えっ⁉ き、気持ちは嬉しいが……」  竜子は恥ずかしそうにする。玲央奈が慌てる。 「冗談よ! 何を本気になっているのよ! 貴女には借りがあるからね……」 「借り……ああ、ワシに負けたことか?」 「勝ったのは私でしょう! ま、まあ、ギリギリだったけどね……」 「あの二歩さえなければのう……」 「ちゃんとルールを覚えた貴女との再戦、それこそが私の望んでいたこと……」 「それを望んでおったのか……」 「ええ、そうよ……」 「もうすぐ叶うのう……」 「まあ、まずは第二試合をしっかりと見ていなさい。貴女と同じように、私もあの時より確実に強くなっているから……」 「そうか、それは楽しみじゃ」 「そろそろ時間ね……それじゃあ、失礼するわ」  玲央奈が会場へと向かう。
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