雪の日には氷は溶けない

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今の男の話によると、動画投稿者は3人組だったから、凍らされた人は3人であるはずだ。けれど、僕が地下の氷保管所で見た凍らされた人の数は3つどころではなかった。パッと見ただけで50人分はあった気がする。 驚いたように凍っている人や、覚悟したように目を瞑って凍っている人、わけもわからず口を半開きにして凍っている人。様々な表情で止まった人たちが暗闇の中にいて、不気味だった。 そんな感想を男に伝えた方が良いのかもしれないけれど、すでに口を猿轡で止められている以上、何の返事もできなかった。男が僕の手足を拘束し、口止めするまでの手際がかなり良かったのには驚いたが、すでに何十回も同じことをしているのなら、そこまで難しくも無かったのかもしれない。 「さ、これで話は終わりだし、そろそろ外に出るか。室内だと中途半端にしか凍らねえからな」 僕に語りかけてから、今度は部屋の外に向かって大きな声を出した。 「おい、そろそろ運び出すぞ。手伝ってくれ」 雪が止んでくれていないだろうかと思い、窓の外に視線を送ってみたけれど、先ほどよりも強く吹雪いていて、しばらく止んでくれそうにはなかった。次々と部屋のなかに入ってくる男たちの視線は全て、手足を縛られて床に寝転がされている僕の方に向いていたのだった。
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