【1】 破婚

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 どれくらいの時間ボーッとしていただろう。小さい頃に聞いた料理番組の始まる時の音楽が聞こえてハッと我に返った。  テレビに目を向けると主婦でも簡単に作れるお昼ご飯を紹介する『三分料理』に番組は変わっていた。時間は11時50分。藤川くん昨日お願いしたことやってくれてるかな? こんな時でも仕事のことが気になった。しかし、すぐ昨夜のことが思い出され頭の中は暗黒色に染まる。  頭の中の暗黒に染まった壁を何回白く塗りつぶしても下から滲み出る暗黒の色で一瞬に現実に引き戻される。いっそのこと死んでしまった方が楽だな。。。死ぬくらいだったら何でも出来ると言う人がいるけど死んだ方が楽なこともある。結子は初めて思った。何回頭の中の暗黒を消そうと繰り返しただろうか……。 時間だけが無情に過ぎていった。 「クゥ~」  空腹を知らせるお腹の音がなった。朝から何も食べていなかったことに気付いた。落ち込んでいるせいかお腹が空いた感じはなかったが何か食べておこうとお茶漬けを流し込んだ。胃の奥から気持ち悪いものがふつふつとマグマのように込み上げてきた。お箸を置くと急いでトイレに駆け込み吐いた。うがいをするとテーブルの食器はそのままにしてベッドで横になった。  リビングからはテレビの笑い声が聴こえてくる。結子はそのまま仰向けになると目を瞑った。  今日はずっとボーッとして時間の感覚がない。この先のこともまったく考えられない。気付けば日が暮れ夕飯の支度の時間になっていた。今夜、俊介ともう一度話をしよう。何とかやり直せるように話したい……。夕飯の支度をして俊介の帰りを待った。  時計の針は21時を指していた。いつもならとっくに帰宅している時間だ。俊介の好きな唐揚げを作って何時ごろ帰るかメールを入れてみたが既読にならない。  待っている時間がとても長く感じられた。既読にならない携帯を持ちながら俊介を待ったが結局その日は帰って来なかった。
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