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「メリー、元気出た?」
街へと続く押し固められた石畳の道を{瞬足}に走らせながら、前方を向くマリアが問う。一瞬その言葉の意味が分からなくて、メリンダは言葉に詰まった。
「なんか朝から元気なさそうだったから、ちょーっとサービスしたんだけど……余計なお世話だった?」
「マリア様……!!」
隠しきれなかった自分を恥じるべきなのか、否、隠しててもなお見抜いてメリンダを元気づけようとしてくれる彼女が尊い存在なのだと、メリンダは彼女の腰を強く抱く。当然だ、神の前に隠し事なんて出来ない。隠そうとする必要すら無かったのだ。
「本当は昨晩、怖い思いをしたんです」
「あらあら。そういう時はアタシの部屋においで、気分が晴れるまでお話しようよ。メリーならいつ来てもいいんだから。……あ、もしかして来てくれたのにアタシ起きなかった?」
「いいえ、寝ぼけ眼でしたが、起きてメリンダを抱きしめてくださいました。だから昨晩は“良い夜”になったのです!」
「そっかそっか、そういうことね。そういう時はもっと気合い入れて叩き起してくれていいんだよ?」
「いいえ! 抱きしめてもらえただけでメリンダは幸せでした! だからそれで充分です」
すりすりと背中に頬擦りしても、マリアは拒んだりしない。
この国のどの馬よりも素早く大地を駆け抜けた{瞬足}のお陰で、二人はすぐに街に到着した。マリアは街の裏路地で{瞬足}の足を止めさせ二人で降りると、キスをしてから魔神をカードに戻す。
「到着!!」
うーんとのびをしたマリアは、次にパチンと指を鳴らす。{替}の魔神を呼び出したのだろう、メリンダのメイド服は忽ちマリアと似通った洋服に変わる。
「うん、良い感じにオソロ。アタシ達、今日はのんびり休暇中。いいね?」
「はい! マリア様!」
「さ〜てさて、どこから行こっか? メリーはどこに行きたい?」
「マリア様の行きたい所に!」
「あはは、言うと思った。じゃ、行こっか」
マリアは手を差し出して、メリンダはその手を握る。二人の少女が、街へと歩き出しメリンダにとっての“デート”が始まった。
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