24話:結局三つ子の魂百までなのです

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24話:結局三つ子の魂百までなのです

🐰  まず二人が向かったのは、街でそこそこ繁盛している商店だった。今日一日の遊び金を作るため、マリアはメリンダを引き連れて換金所の役割も担っているその店を訪れる。昼時だからか、店内の客の数は少ない。 「御機嫌ようお兄さん。換金をお願いしたいのだけれど、どちらで対応していただけますか?」  和やかに人当たりの良い笑みでマリアが問えば、会計用カウンターに立っていた青年は「奥の部屋で父が承ります」とマリアを奥に促す。言われた通りそちらへと入れば、更に奥の部屋から初老の男性が出てきて対面となる。  金額を計算するためのそろばんと商品を吟味するためのルーペグラスを持った男性は、来店したのが年端もいかぬ少女二人だと見ると金にならないと思ったのか「どーぞ」と雑にソファーに座るように促した。 「それで? 今日はどんなものを持ってきたんで? 悪いがうちはおもちゃは買い取りしてないんだけれどねぇ」  面倒臭いというのが隠しきれていない態度の店主に、しかしマリアは笑顔のままだった。 「まさか、玩具(ニセモノ)なんて持ってくるわけないじゃないですか。ちゃんと本物(・・)ですよ。これからデートだっていうのに、偽物なんて持ってくるわけないじゃない」  くすくすと笑い、そしてマリアはパチンと指を鳴らす。パッと応接間の卓上にアクセサリーボックスが現れて、マリアはその箱を開いた。店主がぎょっと目を見開く。店主が驚くのも無理は無い。そのアクセサリーボックスの中には、大きな宝石の着いた髪飾りやネックレス、ピアスなどがこれでもかと並べられているのだから。  きちんと整頓されてはいるが一つの空きも無くアクセサリーが敷き詰められたそのアクセサリーボックスを見て、店主は明らかに狼狽した。 「お嬢さん、まさか盗みを働いたんじゃないだろうな? うちは盗品の買い取りはしないぞ?」 「失礼な人ねアナタ……。これは貰い物よ、も・ら・い・も・の。  アタシに好意を寄せた人がアタシを口説くために贈ってきたプレゼントなの。でももう婚約した身だし、アタシの婚約者様は嫉妬深くて他の男から貰ったプレゼントを身に付けるのなんて許してくれないし……だから売りに来たのよ。何か問題ある?」  これは嘘である。実際はどのアクセサリーもマリアが{(チェンジ)}の魔神に造らせたものだった。その辺に転がっている石ころを宝石に、ゴミ捨て場で捨てられている壊れた玩具を本物のアクセサリーに、替えてあとは接着するだけ。それだけでも立派なアクセサリーになるのだからよく考えたものである。  店主は慌てて手袋をポケットから取り出すと、アクセサリーを一つ一つ手に取って宝石が本物かを確認し始めた。
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