006

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観賞用と言うのは名ばかりで、余計な抵抗が出来無い様な、若しくは誰かが欲しがる様な体にされてから買われて行く。目的は色々あるだろうが、大抵はご想像通りに使われる。今の所そう言う目には遭って居ないので、未だ幸せな方なのかも知れない。 「釣れないね。君は自分の魅力をもっと解った方が良い。今度教えてあげる」 主の腕の中から人形が冷たい眼で少年を睨み付ける。主を独占したいのだろう。少年としてはその方が有難い。自分が今どんなに惨めかなんて知りたくも無い。此処に来る前は誰よりも上に居たのに、変な奴に買われた所為でまるでペット扱いだ。夢であっても最悪。一刻も早く醒めたいが、更に最悪な事に現実である。 「……要らない」 視力が無くなる事と脚が無くなる事、何方の方がマシなのだろうか。何方にせよ生かされて居ると言う状況が屈辱的で、それなのに自害する勇気が出ない自分に吐き気がする。 今度こそ、誰も助けには来ないのだ。
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