私は声帯を失った

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手術は成功した。 話したいと思ったら、首の下の呼吸の穴を塞ぐだけでいい。 肺から出した息は、私の食道をふるわせてくれる。 その声は、これまで聞き慣れていた自分の声ではないけれど、自分で話しているという実感をもつことができた。 今まで使ってきた発声法は、とても小さい声しか出せなかった。 けれど、今は肺の中の豊富な空気を利用して発声できるようになった。 前よりも大きな声が出せるようになったのはとても嬉しい。 気管と食道を結ぶパイプは一日に数回、自分でブラシを使って清掃しなくてはならないし、数ヶ月ごとに病院で器具を交換しないといけない。 なかなかに手間がかかるけど、自分の息で食道をふるわせて声を出すというのは、やはり話している実感があり、話すだけでとても幸せな気持ちになれた。 私は第二の声を手に入れた。 この声で私はこれからも生きていく。 < 了 >
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