岸野side

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岸野side

「大丈夫かな」 辺りを見回し、一歩前に。 コソコソしなければならない理由は、 ちゃんとある。 今夜は同期の川瀬由貴との初めての サシ飲みで、 入社以来、半年かけてコツコツと アプローチした結果、高嶺の花である 川瀬から社外での交流の承諾を 取り付けたのだ。 絶対に邪魔はされたくない。 そう思うのはとても自然なことで、 待ち合わせ場所の会社近くの公園へと 足早に急いだ。 「佐橋、何でここに」 公園に川瀬の姿が見え、手を上げかけたら 僕にとっての最大にして唯一の邪魔者が 川瀬の横から姿を現した。 佐橋雄大。 川瀬と同じく同期入社の彼は、 僕が川瀬に一目惚れしたことをすぐ見抜き、 それ以来ありとあらゆる場面で 川瀬との間に割って入ってくる。 「何でって、川瀬から連絡があった」 「えっ」 驚き川瀬の顔を見ると、 川瀬は小さく頷き、微笑んだ。
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