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翌日、昨日の吹雪が嘘かのような快晴だった。
目を覚ましてすぐ、腕の中の妙な空虚感を察知し、恐る恐る上体を起こした。段々と脳が覚醒し現実を痛感する。
銀髪の彼女が、跡形もなく消えて無くなっていた。
声をかけてあげられなかったのは僕の落ち度なのに、その場に座り込んで昨晩のことを思い返した途端、何故か涙が止まらなくなった。
勿論あれから、彼女の姿を断片だけでも見られた日は一度もない。あの時、僕が彼女を引き留められていたのなら、此処で一緒に住もうと軽蔑を覚悟で提案できていたのなら結末は変わっていたのかもしれない。だが今になって後悔したところで栓無きことだった。
一頻り泣き終えたところで、ふと露台に目を向ける。スチール製の床の上で、手の平サイズの雪だるまが俄かに溶けかかっていた姿が脳裏に焼き付いた。
彼女が本物の雪女だったのか否かは、未だに判らない。ただ、この鮮烈かつ後悔にまみれた雪の思い出が、未来永劫この頭脳に凍てつくであろうことだけは間違いないのだろう。
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