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残光5-⑷
九月二十一日
そろそろ食料が心もとなくなり始めた。この島では何も育たず、獲れる物は野草と海岸に打ち上げられる小魚と貝だけだ。
十月一日
地下の看守室で所長への差し入れと思われる本土からの米と雑穀を見つける。すぐ粥にして食したが、うまい。よほど身体が栄養を欲しているのだろう。このままでは餓死か凍死を待つことになりそうだ。
十月五日
冲に船影を見つける。栄養失調で目は弱っているが間違いない。恐らく黄金の噂に尾ひれがつき。一山当てようというならず者が危険も顧みずやってきたのだろう。私はしばらく身を隠そうと思う。この日記もその間、記述が途切れるだろう。
※
「ふうん……その「船でやって来たという「誰か」はまだいるのかな」
「神父が姿を消し続けている以上、そうでしょう。あるいはもう「誰か」の手によって……」
天馬が語尾を濁した、その時だった。かちりという嫌な音が聞こえ、流介は慌てて入ってきた扉の取っ手を掴んだ。
「……開かない!誰かが外から鍵をかけたんだ!」
「閉じ込められたと言うわけですか。これは迂闊でした」
「どうしたらいいんだ天馬君。このままこの部屋で助けを待つしかないのかい?」
「とりあえず、出口がないか探しましょう。出口が他になければ手持ちの道具で鍵を壊しましょう」
「ううん、見たところ無いように思えるがなあ」
流介がぼやきながら室内をあらため始めた、その時だった。ずずっという音と共に本棚の一つが前にせり出し。そのまま右に動き始めた。
「……あっ」
本棚の下から覗いたのはどこかへ続く短い通路と、通路に立ってこちらを伺っている年配の男性だった。
「あなたは……」
「どうやらならず者の仲間ではなさそうですね」
壁の穴を潜って現れた僧服の年配男性はそう言うと、「ここではなんですから隠し通路を通って図書室の方へ移動しましょう」と言って壁の穴を振り返った。
「あなたはここの神父さんですか?」
「そうです。幸い、私はまだ「敵」に見つかっていません。お知りになりたいことがあれば、図書室の方で伺います」
神父らしき男性はそう言うと身を翻し、元来た道を引き返し始めた。通路の終わりは壁になっており、神父が何やら唱えると壁が横に動いて向こう側の部屋へと続く穴が出現した。
「そうか、この隠し通路は両側から本棚で隠されていたってわけだな」
流介が感心して声を上げると、神父が「しっ」と言って口の前に指をあてがった。
「ならず者がすぐ外にいないとも限りません。話すなら小さい声で話しましょう」
神父はそう言うと深呼吸し、「私はこの島で神父をしている傘羽流山と申します。あなた方は?」と言った。
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