第四十二話「赤くはなくて、優しい糸」

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 源くんが、芙実香ちゃんを見つめたあと、私たちに視線を置いて、それから視線を落とし、焼酎を飲みながら続ける。 「別に、そういうわけじゃ全く、なくて。織田は、なんか再婚の見通し、今はつけないだろうなと思うし、前述した通り、今はしないんだろうなとも、少なくとも俺は思う。まあそういう人が、いずれ現れて。そういう感情が生まれるのも、確かに大事だ。織田の人生だからね。紀寧と居たことが、もう今は過去になったんだから……お前の人生を考えるのも、大切だ。でもそれは、せめて芙実香が成人してから、いい人見つけて、一緒になるべきだと思うんだよ。俺個人的の考え方ではさ。それが親の責任ってやつなんじゃないか、と勝手に思うんだ。こちらも少なくとも、世間に、俺がどう非難されと言われようとね」 「ああ。俺も、類井と同じ考えだ。というより、再婚は芙実香の涙を見て、今は考えておらん。そういう相手も居ないしな。俺は。……」  俺は。と──織田くんは少し目を伏せて沈黙する。一同で、言葉を待つと。
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