丑崎なつりという彼女は②

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◇◇◇ 「━━━━、という出来事があったんです。お医者さん曰く、今回の地震と砂嵐の自然災害で〈幻覚〉を見て混乱しているだけだからと、いう事らしいです。ゆっくり休ませれば、元のように元気になると言ってましたので安心してください!」  今でも、隣で「すなばから、さかなが」、「さかなから、にんぎょさんになってまほをおいかけてきて」など訴えている、まほ。  担任からの報告を静かに聞いた露子は、確信を得た今。絶望の海に漂っていた。  今回の件の原因は、━━自分の娘。  謝罪しても、許されないことをしてしまった罪。子供の過ちは親の責任である。  「三上先生、この度は……大変申し訳ございませんでした。ご迷惑おかけしました」    今回の事故で、いきなり土下座をしてきた露子に三上は困惑し、言葉を失う。数秒後に、我に返り土下座を止めさせようとしゃがみ相手に声をかける。 「なつりちゃんママ、今回はこちらの責任です!謝らなきゃいけないのはこちらなんです!!お願いですから、頭をあげてください!!」  隣から幼い子からの今でも続いている泣き声と訴えに、心を痛める露子。ただ、ただ、申し訳なさで頭の中がいっぱいだった。  そして、この家系に生まれてしまったなつりに対してもだ。  厄除師の一家に生まれてしまったばかりに、普通の生活ができなくなってしまった、我が娘。   「おかあ……さん」  ベットからの幼き声。  耳にした今。露子は反射的に立ち上がり、目を覚ました我が子を抱きしめた。  生きている実感、我が子が意識を取り戻した喜び、娘を失いたくない焦りなどが混沌しきつく、きつく、抱きしめた。 「ごめんね……、ごめんね……!なっちゃん。お母さんが、悪いの。ごめんね……」 「おかあさん、くるしいよぉ。わたし、へいきだから。だいじょうぶ」  急に涙を零しながら抱き着いてきた自身の母親に対して、状況が追い付かないなつりは困惑しつつも。今、抱きしめられていることが嬉しく感じていた。 「なつりちゃん、大丈夫!?身体のどこか痛くない?大丈夫??」 「あ、みかみせんせえ!うん、だいじょうぶだよ。……まほちゃんは、だいじょうぶ?となりのへやでないてるの、まほちゃんだよね??まほちゃんのところにいってあげて!せんせえ」 「━━ッ!!ありがとう、なつりちゃん。また後で来るからね!」  意識を取り戻したなつりの言葉に、安堵した三上は露子の「失礼します」と伝えた後、隣の部屋へ移動した。  親子二人っきりになった、大部屋の病室内。  廊下から、ちらほらと声が聞こえてきたが本人たちの耳には届かず。  露子は、今でも娘が生きていたことだけでも、喜びを嚙みしめている中。━━コトリ、と乾いた音が聞こえた。  何事かと思った露子はすぐに警戒し、なつりを隠すように音の方向先へ臨戦態勢に入った。 「━━……箱?」  視界に入れると、窓際に置かれていた。約十五センチメートルくらいの長方形箱。ご丁寧に赤いリボンで結ばれている。  お祝い事なら喜べるが、突然現れた小包。しかも、窓際だ。よくみるとリボンの隙間に、折りたたまれた手紙が挟まれていた。  不思議に思った露子は、再度誰も居ないことを確認する。そして、警戒しつつ空気中に舞っている砂、塵などで厄除師の能力の一つ〈纏〉で操作し手紙を開いた。  送り主を確認し、予想外の人物からの送り物に絶句してしまう。 「━━ 公主……?」  急いで、手紙の内容を確認をすると。露子の手中に収められていた手紙が、するりと落ちた。  一時間前。こちらが幼稚園から呼ばれた時と同時に、旦那が緊急会議に呼ばれた。その意味がつじつまが合い、もう隠し通せないと嫌でも悟ってしまう。  公主どころか、他の十二支たちに筒抜けになってしまったのだ。  焦燥感を越えて、絶望が生まれた今。気持ちを落ち着かせようと、静かに目を閉じる。 ~~~~~~~ 丑崎 露子様 本日、午前十時半頃。あおもり恵愛幼稚園にて。 丑崎 なつりは、被害者〈ワタナベ マホ〉に厄除師の能力を発揮し、襲ったことが確認取れました。 今回は、能力の誤発動による事故でしたが危険対象とみなす。 理由:幼稚園の敷地内で地震、砂嵐、砂人形などにより、一般人三十名を被害に合わせた事実確認あり。 上記内容の元、十二支会議で出た結果は下記の通りになります。 〇丑崎 なつり(四歳)  能力制御装置の着用を命ずる こちらは決定事項の為、異論は認めず。今後の様子見次第で変更する可能性あり。 以上 よろず探偵事務所  ~~~~~~~~  
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