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プロローグ
少しでも体勢を崩せば、身体ごと空へ吹き飛ばされそうだ。
地面に埋まった石にしがみつく。降りしきる雨でぬかるんでうまく力が入らない。けれど、必死だった。
雨が痛いなんて初めての感覚だ。
まるで無数の針が空から降ってきて全身に突き刺さっているようだ。
ゆっくりと慎重に、腕と足を動かして、吹き飛ばされた防風シートに手を伸ばす。幸い近くの木に引っ掛かっていた。
早くシートをかぶせなきゃ苗が駄目になってしまう。来年の出荷が出来なくなってしまう。
そうなったら、もううちの畑は……
守らなきゃ。命にかえても守らなきゃ。
お父さんの畑。約束したんだから。
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