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①
その日は特別な1日というわけではなかった。
強いて言うなら、楽しみにしていた作家先生のラノベ新刊が発売される、というくらいで。
普通ではないブラック企業で働く一社員の、普通の一日が過ぎ行こうとしていた。そのはずだった。
◇◇◇◇◇◇
時刻は深夜を回り、午前3時。草木も寝静まった丑三つ時に、街を歩く人はほとんどいない。
眠気と過労でもつれる足を動かしどうにかマンション5階の自宅にたどり着くと、私は玄関にそのままぱたりと倒れた。
最後の気力を振り絞って帰ってきたが、もう歩けない……。
「つっ……かれたぁ……」
私の名前は、花菱桔梗。22歳。新卒で働くことになった会社がブラック企業でした……。
地獄の初24連勤を終えたばかりでつらい……。
なーにが「労働基準法最大日数の24連勤は新入社員の登竜門!」(By上司)だよ。ふざけやがって。ただのブラック企業のやり口を上手い具合に誤魔化しただけでしょうが。
逃げられるうちに逃げなくては、と頭の片隅で考える。
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