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お盆になると里帰りしたくなるのは、やはり私が日本人だからなのか。
そのような帰巣本能が刷り込まれているのだろうか。
八月になり、私は実家に向かう。
人とすれ違うときは、ついつい自分の頬を手で隠してしまう。
大きな痣を隠すためだ。
昔に比べれば、痣は目立たなくなっているというのに……
一度ついた習慣はなかなか消えないもの。
学生時代、本当はポニーテールやツインテールなどの髪型にしたかった。
けれども、私はいつも下ろした髪型をしていた。
痣を髪で隠すためだ。
そんなことを思い出しながら実家に向かう。
お盆に里帰りするなんて当たり前のこと、と思う人もいるかも知れない。
しかし、私の過去を知っている者からすれば、こうして律儀に里帰りしている姿など、おそらくは想像できないだろう。
私は社会のはみ出し者だった。
若い頃は一日も早く家を出たいと思っていた。
空を飛ぶ鳥のように、私は自由になりたかった。
この家に生まれてきたことを呪っていた。
あれこれ考えているうちに実家が見えてきた。
見ればやはり思い出してしまう、子供の頃のことを。
周りには誰もいないのに、また頬を押さえてしまった。
私の体は吸い寄せられるように実家へと向かう。
なんでこんな家に……
思いと正反対の行動をしている自分に苦笑した。
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