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セイジと出会う
深い森の中、その中の、一本道を歩いているのは、魔女のベニーだった。
魔女と言っても、見かけは17~18歳位、気品の有る顔立ちで
髪は金色に輝き、目は海の様に青く、小さくて赤い唇は
熟れたサクランボの様だった。
赤い衣に、白い上掛け、右手に、魔法の杖を持ち、のんびりと歩く。
と「助けて~っ」と言う、切羽詰まった声と共に
誰かが、何かに追われて、走って来た。
ベニーが振り返ると、大きな熊の様な魔物に、追いかけられて居たのは
まだ若い男だった。
男は、必死でベニーの横を走り抜けた、すぐ後ろの魔物が
「ガォ~ッ」と、叫び、ベニーに襲い掛かる。
ベニーは、持っていた杖を、魔物に向けた。
すると魔物は、一瞬で、沢山の肉片になった。
「へ?」後ろを振り返った、若い男が、目をぱちくりとさせ
「嘘だろ?」と、呟く。
息を整えながら、ベニーの傍に来た男は、それでも「有難う」と言った。
「魔物に、背を向けて走るなんて、無謀だね」と、ベニーが言う。
「だって、いきなり飛び出て来て、追いかけるんだもの、逃げるよ」
男は、ちょっと、不服そうな顔で言ったが
「それにしても、あんた、すげ~な」と、ベニーの強さを、素直に認める。
「こう見えても、魔女だからな」「え~っ魔女さん?こんな若いのに?」
「魔女だって、始めから年寄りでは無いぞ」
「そりゃぁ、そうだろうけど、、、」そう言った男の、腹が、ぐ~っと鳴る。
すると男は「なぁなぁ、俺を、お供にして呉れよ」と、頼む。
「嫌だね」「何でだよ、ほら、この肉だって、一人で持つのは大変だろ?
俺も、持ってやるからさ」男がそう言うと、ベニーは杖を肉片に向けた。
肉片は、一切れだけ残して、消えてしまった。
驚いている男に「魔女だからな、こんな事位、朝飯前だ」と、ベニーは言う。
「何で、一切れ残ってるんだ?」と、男は、残っている肉片を指さす。
「それは、お前にやる分だ、腹が減っているんだろ?」
「えっ、俺にくれるの?やった~~」「早く、木を集めて来な」「うんっ」
男は、直ぐに、枯れ木や枯れ枝を集めて来た。
それを積み重ねさせて、ベニーが杖を向けると、ぼっと火が点く。
「魔女さんって、便利だな~」男がそう言うと
「私は、ベニーと言うんだ、お前は?」と、ベニーが聞く。
「俺は、セイジだよ」「何歳だ?」「19歳だ、ベニーは?」
「さて、150歳までは数えたが、後は、知らない」「ええ~っ」
こんなに若いのに、150歳越え?セイジは、また、嘘だろと呟く。
「ほら、もう焼けて来たぞ」「頂きま~す」よっぽど、お腹が空いていたのか
セイジは、夢中で頬張り、あっという間に食べてしまった。
お腹が膨れたセイジは「ベニーさん、この先の町に行くんだろ?」と聞く。
「そのつもりだ」「じゃ、なぜ歩いていたんだ?
魔女なのに、箒には乗らないのか?」
「箒に乗れば、一瞬で目的地に着く、だが、何の目的も無い私は
のんびり歩いている方が、楽しいからだ」と、ベニーは言う。
「町へ行くのが、目的じゃ無いのか?」「町に行くのは、何時でも良い
それ程強い、目的じゃない、それより、歩いていれば、体にも良いし
道端に咲く、可愛い花だって愛でられるしな」「良く分からないな~」
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