君は真冬といい、その唇は紅色で

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*****  そう大きくはない街だけれど、札幌のベッドタウンということもあって、僕が住んでいる駅直結のマンションには小五の同級生が四人いる。一人は翼君、一人は大輔君、そして残り二人は女のコで、一人は加奈子ちゃん、もう一人は真冬(まふゆ)という。  真冬だけは呼び捨てだ。僕なりに頑張って、精一杯の親愛と誠意を込めて、特別にそう呼ぶことにしている。他の男子や女子とは区別している。だって、そうしたいから。  そう。  僕は真冬のことが好きだ。ずっと前、ずっと昔から好きだ。  恋愛感情というのとは違う。多分、違う。ただ、他に言い様がないから、好きという言葉を用いるしかないのだと思う。いわゆるボキャブラリーというヤツが絶望的に不足しているのかもしれないけれど、あるいは、いつまで経っても好きという表現しかできないかもしれないとも考えている。そんな予感が確かにある。その点、ちょっと不思議だ。どれだけ勉強ができるようになっても、どれだけ賢くなっても、僕は好きだとしか言えないのではないか。
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