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「センセーさぁ、姑息だね。卑怯者だよ」
最寄りの駅が見えてきた。
微かに踏切が閉まる音が聞こえる。
「人の気持ちガン無視して自分の保身ばっかじゃん?」
俺の物言いに百田は怒り出すかと思いきや、意外にも口元には笑みを浮かべている。
「それの何が悪い」
「は?何開き直ってんの?」
「俺は大人で理性というものがある。性衝動や己の感情のままに生きるお前ら高校生とは違う」
「性衝動って……俺らを猿みたいに言うなよ」
高校生という存在を一括りにして決め付けるみたいな百田の物言いには、流石にカチンと来た。
「人間誰しも己が可愛いのが当たり前だろ?お前は違うのか?」
「………」
ここで「違う」と即答出来なかったのは、百田の考えに同調出来る部分があるから。
「面倒事は嫌いだ。己の人生の足を引っ張りそうな存在とは最小限の関わりで済ませたい」
車が駐車場の端に停車した。
「さ、着いたぞ。気を付けて帰れよ」
百田がやんわり降りるよう促してくる。
「面倒事が嫌いなら教師にならない方が良かったんじゃねーの?」
負け惜しみみたく言ってシートベルトを外した。
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