キミのためにできること

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「手分けして探しましょう」 「助かります」 エオル先生と別れて、俺はひとり走り出す。 足は動かせ。でも、焦るな。 こんな悪天候の中、やみくもに動くべきじゃない。 考えろ。 子どもの足で、そう遠くにはいけないはず。 それに、孤児院以外でソルが知っている場所は、そこまで多くないはずだ。 俺の家には来ていない。なら、どこへ? ふと思い浮かんだのは、初めてソルの笑顔を見た場所。 俺の実家に逃げこもうとして、吹雪の中、方向感覚を失ったとしたら……。 雪が吹きつけてくる中、俺は必死に足を動かした。 「ソル……どこだ、ソル!?」  くそ。唇がうまく動かないし、肺も凍りつきそうだ。 でも、それでも、諦めるわけにはいかないんだ。 「ソル、聞こえるか!?」 我が子を失った悲しみは、俺には想像もつかない。 だけど、だからって、ソルをこんな風に追いつめていいわけがないだろ! 「聞こえたら、返事しろ!!」 頼む、俺の声に応えてくれ。 俺の名前を呼んでくれ!! 「……ス」  かすかな声が耳に届き、俺は周囲を見渡した。 「ソル!?……どこだ、ソルーッ!!」 どこだ、どこにいる!? 目をこらせ。必ずどこかにいるはずだ。 「テル……ス」 ……いた!! 「ソル!!」 うずくまるソルに駆けよって、俺は彼を抱きしめた。 腕の中で小さな身体がガタガタふるえている。 「大丈夫。……もう、大丈夫だからな」 大粒の涙をこぼしながら、ソルがかすかな声でささやく。 「テルース……ヤだよ……。もう、あのおうちは……ヤだよぅ!!」 それは、しぼりだすような、ソルの精一杯の心の叫び。 「安心しろ。どこにもやらないから」 小さな顔が涙で凍りついてしまいそうな気がして、俺は頬をよせソルをきつく抱きしめた。 「ずっと、一緒にいよう。……約束だ」
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