31人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「上がっても大丈夫?」
「え?」
「ひとり暮らしの若い女性の部屋だから」
「ああ」
考えてもみなかった。誰でもウエルカムじゃいけないんだった。
「えっと、じゃあ取り敢えず免許証でも見せてもらっていいですか?」
「だね。君はお友だちと違って何モノをもウエルカム状態だから、気をつけた方がいいよ。僕だから良かったけど、霊能力者だと偽って悪さする輩もいっぱいいるからね」
晴男は免許証を財布から取り出した。ふむ、偽名ではない。年は私より5つ上か。おお、ゴールド免許だ。安全運転する人なら信用できる。
「いかがですか?」
「はい。大丈夫です」
「あのね、免許証なんていくらでも偽造できるんだから、決して安心材料じゃないんだよ」
「じゃあ何を見て信用すればいいんですか?」
「誰も信用しないのが一番だ。親の言う事だけ信用していればいい。君の事を一番考えてくれてる人だからね」
物凄く納得した。その通りだ。誰よりも私の事を考えてくれているのはお母さんとお父さんだ。
「今の言葉でなおさら信用しました。どうぞ上ってください」
いざとなったら隣には美月さんがいる。大声を出したら来てくれる。いや、既に壁に耳を付けて様子を伺っているかもしれない。なんたって霊能力者が来てるんだから。美月さんが興味ないわけがない。
「ふむ……むむむ……」
晴男が一点を見つめ手を組んだ。そして何やらブツブツと唱え始めた。と思ったらいきなり手刀を振りかざした。
「悪霊退散!」
ビシッと手刀を振り下ろし、ふうとため息をついた。
「一体片付けたよ」
「……え?」
「天井からぶら下がっていた女がいた。首を吊って亡くなった人だね。恨めしそうにこちらを睨んでいた」
「ひーー」
早速1人片付けてくれたんだ。凄い。ん? 片付けた?
「それって除霊? 浄霊?」
「どっちでもない」
「え?」
「霧散させた」
「は?」
最初のコメントを投稿しよう!