第3章:セーフワード

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「よくないです。返して」 「いや!」 「Give(ちょうだい)」 「あっ」 ドクンっと心臓が胸を打ち、私は持っていた書類を宇佐美くんに手渡してしまった。 「ずるいわ、こんなことにコマンドを使うなんて」 「だってあなた、じゃないと言うこと聞かないでしょ」 「だからって……」 「あと無理をするのもダメですから。これは俺がやっておきます」 宇佐美くんに迷惑かけているわけでもないのに、彼が何でそんなこと命令するのか分からない。 私に無理させたいわけじゃないって言ったり、私の仕事を取り上げたり……。 何が狙いなの……。 私がじっと彼を見つめると、彼は勘弁だとでもいうように答えた。 「あなたに倒れられたら困るからです」 ――ドキン。 なに、その顔。 いつも余裕の彼が必死にそんなこと伝える。
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