恋は人をかえる。

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恋は人をかえる。

 好きな人ができた。  その人は、私を好きだと言ってくれた。  声にして言葉をのせ、優しく手を引いてくれる。  私の人生はここから大きく変えていける気がする──。  私の人生は不遇ばかりだった。  様々な場面でなにかといじめられたり、バイト先や就職先が次々と倒産したり。  それらを嘆き下を向いて歩いてきたわけじゃないけれど、根本にある体調不良が私を後ろ向きにさせていた。    覇気がないとよく言われた。  そりゃそうだ。ネガティブの沼にどっぷり浸かっているのだから。ハマったら抜け出せない居心地の良さが、さらなる悪循環ではあった。  だから、明るい未来を夢見て何度も恋をしてきた。  けれども、いつも誰かに奪われた。  今度こそはこの人こそはと強く思っても、遅かれ早かれ奪われる。  誰かのための恋人配給者みたいで、自分を嘲り笑ってしまうこともあった。  不遇を不遇と感じ、別の体調不良を引き起こすジレンマ。  ただ、この恋は今までとは何かが違う。  神様からのプレゼントかもしれない。  不遇な私にもチャンスはあるのだと、神様は言っているのだろう。  ネガティブの沼から脱するにも、このチャンス、逃したくはない。  私は自分自身に興味をもつよう心がけ、メイクや服装、食事に至るまで気を払うようになった。  少しづつ自分が変わっている感覚を覚え、今までにない景色すら見えるようになっていた。  根本の体調不良がすぐに闇を連れてはくるけど、勝手知ったる私の闇ぐらい、いかようにも過ごせるのだから怖いものなどない。  そうね、怖いものなんて、私には最初からなかった。  この恋を失うことこそが恐怖なのだから。
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