プロローグ

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 最初は専業主婦だったけれど、狭いマンションに閉じ込められるのに嫌気がさして自ら志願して働きに出た。  私はゲームが好きなので、パートでアプリの仕事を制作・補佐するアルバイトを始め、腕を買われてめでたく正社員に昇格した。今度新作アプリの企画を任されることになったが、パートの時から無駄遣いをしないようにと夫の建真に口座の管理をされてしまい、給料は全額没収されたままでわずかな生活費しかもらえない。  仕方なく夫に伺いを立てて買い物し、食費をもらい、生活している。私だってちゃんと稼いでいるのに、まったく無能の家政婦扱いは相変わらず。 (離婚したいなあ…)  世の中にはクズ夫とうまく別れられたり、見事な逆転劇でスカっと復讐して幸せを勝ち取る人が多いというのに。私は一生このままなのかな。 (離婚するにもお金かかるもんね…) (いきなり一人になっても、無一文じゃ生活できないし…)  夫は朝から必ずご飯を食べてから出勤するので、おかずを作るのが日課となっている。私も会社で働くようになってから、自分の分は朝ごはんの残りでお弁当を作っている。以前は夫の分もお弁当を作っていたが、後輩とランチに行くことが増えたのでババ臭い弁当なんかいらない、と言われてからは二度と作っていない。向こうもその方がいいと思っているのでなにも言ってこない。 『ババ臭いって思うなら、朝ごはんも自分で作れ――!!』  …って言えたらいいのになぁ。どうにも気が弱くて、自分の意見をはっきり言えないのが私の悪いところだ。こんなに傷ついて不満ぶちぶち言ってることなんか、きっと建真はわかっていない。
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