序章

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 到底信じられる話ではない。  盲信的に魔女狩りが行われていたという中世ならともかく、産業、交通の分野が飛躍的に進歩したこの十九世紀末に話されること自体ナンセンスだ。  しかし――。  常識は事実の前にはあまりに無力だ。  彼らは実際そこに存在しているのだから。  気になることは多い。  本人たちは死んでいることに気付いているのだろうか。  心臓が止まっているのにそこに在り続けているのはなぜなのか。  個人的な特性によるものなのか。  何らかの条件によるものなのか。  そもそも《残され人(レムナント)》という者を生きていると判断してよいものなのか。  そのほとんどは謎のままだ。  ただ、ひとつだけはっきりしていることがある。  それは《残され人(レムナント)》に本来迎えてしかるべき安らかな眠りを与えてやらなければならないということだ。
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