恋愛にはならない

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「いやぁ、葬式で会ってから久しぶりに高校時代を思い出してな。この歳になると飲み友達というのもそういないし、どうかなと思ったんだよ」 「懐かしいわねぇ。昔はよく遊んだものだったわね」 「そうそう。去年、斎藤が熟年離婚したの聞いたかい?あの二人、高校からの付き合いだったってのに、今更、夫婦じゃなくても良かったんじゃないかって別れて、今は飲み友達だっていうんだから、人間分からないもだよな、ほんと」  そんな会話だった。なんだか、自分たちの晩年を見ているような気がした。私たちはいくつになってもああやって飲めるだろうか。   私はこそっと直人に話し掛ける。 「ねぇ、隣の二人」 「なんか、俺らの老後みたいだな」 「あ、思った?」 「俺らもああやって歳食ってからも飲んでそう」  思ったことが同じだったことがなんだか嬉しくて、私はふふっと笑う。 「お互い、結婚してるかな」 「どうだろうな、どっちもしてなさそうだし、してそうでもあるな」 「しててもしてなくても、二人で飲める関係でいたいよね」 「そうだな。俺の理想の彼女は、梢を許容してくれる人だな。それ以外は特に希望はないや」 「あたしも、直人を許容できる人以外、特に希望ないわ。あとは、人を好きになれるかどうかかなー」 「そこが一番問題だろ」  言って、また二人して笑った。  友人を大事にするということが私の中で大半を占めているうちは彼氏なんてできないんだろうな、と思いながら、だったら一生できないかもしれないと思ったことは言わないでおくことにした。別に、できないならできないで差し障りはないのだ。  直人のお陰で電車に乗ることもほとんどなくなりそうだし、未来は明るいなと思いながら楽しいお酒を飲んだのだった。
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