第一話

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 四角いテーブルに今日の夜ご飯がある。唐揚げにレタス、ご飯と味噌汁。ポテトサラダ。彼氏の天谷が用意したものだ。山田は唐揚げに箸を伸ばすが、あまり食事が進んでいない。どうしたのだろう。天谷が、尋ねる。すると、山田はうーん、と唸った。少し発言を躊躇う。が、思い切って、話すことにした。  「生徒には秘密にしてほしいんだけど」  と、山田は前置きする。山田は中学の国語教師で、クラス担任でもある。天谷もそのことは知っていた。「うん」と、頷き、耳を傾ける。  「……しい」  「え? なんて?」  「生徒の青春がまぶしいの!」  大声で話したかと思えば、山田は「あああああ」と悶え、顔を両手で押さえた。よくはわからないが、重症っぽいな、と天谷は内心で苦笑する。  「何があったの?」  「実は……」  ぽつぽつと山田は今日の出来事を話し始めた。
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