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荷物の片付けも終わり、冷凍してあったおかずを利用して軽く晩御飯を作ることになった。
「月葉は座ってなよ」
「悠李こそ、ずっと動いてるじゃない」
「俺は男だからヘーキ。月葉は座ってビールでも飲んでて」
(……悠李は、ずーっと私を甘やかしてくれる。人をダメにするクッションみたいだわ。もう、悠李なしじゃ生きていけなさそう)
「じゃあお言葉に甘えて。しばらくニュース見てないから、テレビでも付けよっかな」
政治や芸能のニュースが流れたあと、報道特集のようなものが始まった。女の人が公園でインタビューされている。もちろん声を変え、モザイクで顔を隠しているけれど。
「へえ、国際ロマンス詐欺だって。SNSを使って巧妙に騙されちゃうんだ。こんな大金を取られちゃうなんて怖いな……」
キッチンカウンターの向こうから悠李が私を呼ぶ。
「月葉、今の時間なら音楽番組やってるんじゃない? ほら、今日は確か……」
「あ、そうだった! 久しぶりにワンドルが出るんだよね!」
画面を切り替えるとちょうど始まったばかり。トップバッターのアイドルがカッコよく歌っている。そこへいい匂いが漂ってきた。悠李が二人分のトレイを持ってきてサッとテーブルに並べてくれている。
「はーい。お待たせ。『ふわしゃきレンコンつくね』だよ」
「わ、嬉しい! 悠李のこのレシピ大好き!」
はんぺんとひき肉、レンコンのすりおろしが入ったつくねは、ふわふわシャキシャキでとっても美味しい。旅行前に悠李が作って冷凍しておいてくれたものだ。
「あさり缶と生姜の炊き込みご飯も解凍したよ。俺は月葉のこれ、大好き」
ご飯は私が作っておいたもの。二人で自画自賛し合ってるのが笑えるけど、いつもこうやって褒め合いながら家事をこなしている。
(母や陽菜からは私が作ったご飯をまずいとか工夫が足りないとか言われて、褒められたことなんて一度もなかった。そんな中での家事は苦行だったけど、今はそんなことない。二人で協力し合ってるから楽しい)
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