最終話 やり直し彼氏に甘やかされています

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最終話 やり直し彼氏に甘やかされています

「ただいまー。一週間ぶりの我が家! やっぱり落ち着く~」  ハワイ旅行から帰ってきた私たち。日本は冬なのに、日焼けしていかにも旅行帰り、な風貌になっている。 「初めての海外はハワイに行きたいってずっと思ってたの。夢が叶ってよかった!」 「月葉が喜んでくれて嬉しいよ。俺も、めっちゃ楽しかった」  あれから私は転職し、父と祖母は引越し、そして私たちも新しい部屋に移った。もう母や陽菜に(おびや)かされる心配もなく、穏やかで幸せな毎日を送っている。  キッチンカウンターの上には笑顔の写真。ウエディングドレスを着て、家族とピースして記念写真を撮ったものだ。 「ハワイのお土産、みんなに渡しに行かなくちゃね」 「写真撮った時みたいに、また両家で食事会してもいいかもな。あの時は盛り上がったよなあ」  写真館で結婚衣装での撮影を見守っていた両家族はいつの間にか仲良くなっていて。終わったあと中華料理を食べに行ってすっかり打ち解け、カラオケまで行ったのだ。 「おばあちゃんもノリノリで歌ってたもんねえ」 「冥土の土産とか言ってたけど、お元気だからまだまだ大丈夫だな」  スーツケースを開いて洗濯する物を選り分けている悠李。ガス衣類乾燥機が設置できる部屋を探したから、いつでも快適に洗濯することができる。 「パスポート、戸棚にしまっておくね」  私は二人分のパスポートを、大事なものを入れる棚の引き出しに入れた。  そこに書かれた名前は『鷺宮月葉』。私は、悠李の姓を名乗ることに決めたから。  もちろん悠李が姓を変えてもいいと言ってくれていたし、英姓が無くなることに寂しい思いもあった。でもそれ以上に、私は母や陽菜と同じ姓を名乗りたくない思いが強かった。もう完全に他人になったという実感が欲しかったのだ。 (英月葉でいる限り、二人の面影がまとわりついている気がする。だから、気分を一新したい)  姓の変更には銀行やら何やらいろいろと手続きが多くて大変だったけど、どうせどちらかがやらなくてはならないこと。一方的にお前がやれって言われたのではないから、私も快く頑張ることができたのだと思う。  
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