妻としての欠陥品

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妻としての欠陥品

朝は毎日戦争だ。 朝食の用意とお弁当作り。 片付け、洗濯、ゴミ出し。 自分の支度と子供の支度。 母親って、大変な仕事だと思う。 だけど、それは世の中の主婦皆がしている事で。 主婦なら……女なら、当たり前にしている事で。 女なら、やって当たり前だと思われてて。 誰からも感謝されない。 当たり前。 母親なんだから当たり前。 妻なんだから当たり前。 嫁なんだから当たり前。 でも、その当たり前が私にとっては負担でしかなくて。 当たり前を当たり前にこなせない自分に苛立って仕方ない。 端から見れば甘えているだけなんだろうけど…… 時々、全てを投げ出して逃げたくなる。 焼き過ぎて堅くなったトーストをかじりながら、自分以外の家族が使った食器を洗う。 じわり……涙が滲んだ。 仕事に行けば、気分が沈んでいても作業に集中するしかない。 忙しくて私情を挟む余地なんかありゃしない。 休憩中に職場のおばちゃんの馬鹿話を聞いて、お腹を抱えて笑う。 涙が出るまで笑って、笑って… また忙しなく動き回って…… 家に帰る頃には、鬱々とした気持ちが吹き飛んでいた。 小学校、保育園と、子供を其々回収して 家に帰れば、テレビの前に陣取って、ツマミ片手にお酒を飲んでいる義父。 テレビを見たがる子供達を宥めて翌日の支度をさせる。 宿題にも付き合ってやる。 自分の荷物を部屋の隅に放ったら、夕飯の支度。 ついでに、次の日の朝食とお弁当の下ごしらえも。 テレビを見ている義父と子供達の笑い声を聞きながら、野菜をトントン。 肉には下味付けて。 卵は茹でようか、焼こうか……… 悩んでいる内に聞こえた、チビの声。 「お父さん、おかえりなさい」
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