ゆきにのこる

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「待ってたよ」  誰も居ないはずのところに姫の彼女が待っていた。だけど、彼はそれを驚きもしない。だって王宮の庭には城壁が崩れたところがあって、北側に出られるようになっていたのを子供の頃二人で見つけていたから。  この場所は庭から出て進んだところにある平原。今は雪原となっている。子供の頃は良く雪遊びをしたものだ。  少し笑って彼は「お見送りかな?」と言う。 「違うよ。貴方と平和な村で二人で過ごそうかと思ってるんだ」 「だから、そんなの夢物語だよ。戻りな。君はあの国の姫じゃないか」 「もう違う。私は身分も全部捨て、貴方に寄り添うことにしたんだ。断られても追い掛けるよ」  彼はこうなるだろうとわかっていた。だからまた一つため息をはく。 「本当に良いの? 多分待っているのは寒いだけの地獄だよ」 「もしかしたら幸せな未来かもしれない。それに私は地獄でも貴方と一緒なら構わない」  もう彼女の心は揺るがない。 「本当は君を帰すべきなんだろう。愛してるなら。でも、愛してるから離れたくないと願ってしまう」 「ならしょうがないよ」  彼もつい笑ってしまった。彼女はそんな彼と手を繋いでニコリと笑う。二人は白くどこまでも続く様な雪を眺める。 「明るいそんな夢みたいなところあると願うから」  歩いてる軌跡をどこまでも残してそれでもまだ進む。国はそれから跡継ぎと優秀な戦士を無くして滅び戦争は全て無くなった。雪の山の向こう側に幸せな人の姿があるのかわかるまではもう少しの時が要るのかと。 おわり
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