兄と僕の雪の思い出

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兄と僕の雪の思い出

クリスマスの日、しんしんと雪が降る。 今日は家族でご馳走やらケーキを食べながら過ごしたり、カップルが共に過ごす聖夜。 毎年僕は必ずクリスマスに、兄の入院する病院を訪れる。 個室の病室に、兄はいた。 ベッドに横たわり、固く閉ざされた長い睫毛。 青白く透き通るような肌。 昔はがっしりしていたのに、見る影もないほどに痩せこけた細身の体。 兄はたくさんの機械とチューブに囲まれて眠っている。  「兄さん、もうあれから十年だよ。」 兄は植物状態で十年寝たきりだった。  「僕ももうこんなに大きくなったし、働いてる。 母さんとも上手くやれるようになった。 …だからあとは、兄さんが目覚めるだけだ。」 手袋で抱えて持ってきていた『それ』を病室のバルコニーに飾る。 手袋で抱えられる程度の大きさの『それ』は雪の塊だった。 今日はクリスマスだから、赤い帽子を被せてサンタ風雪だるまにしてみた。  クリスマスは僕の誕生日であり、兄との大切な思い出がある日。 だからクリスマスは必ずお見舞いに行く。 クリスマスに限らず、雪が降ると僕は必ず兄のお見舞いに行く。 実を言うと、雪が降らなくてもしょっちゅう兄のお見舞いには行く。 全てはたくさんの愛情をくれた兄のために。
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