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大学の文学部を卒業したものの、特にやりたい仕事がなかったので、SEの就職面接を3社受けた。コンピューターが相手であれば、人に接する時間は少ないだろうから。
ぼくは梶井基次郎を愛読する、ナイーブな若者だった。
他人と一緒に仕事をして、相性に思い悩みながら、給料を稼ぐなんてできない。そう思っていた。図太くもないし、心の余裕もない。
【桜の樹の下には死体が埋まっている】
そう信じないと外で花を愛でる事も出来ない、梶井基次郎の悲哀に満ちた心情がよく分かる。太陽のように明るく、丸い心を持つ人々なんてあり得ない。ぼくの心はいびつな楕円形だ。
いびつゆえに『一緒に働こう!』と言ってくれる物好きな面接官はおらず、就活はすべからく失敗。
自室にこもるヤドカリとして数か月を過ごす。好きな日本文学を読み漁り、レンタルビデオ屋や図書館の名作コーナーで古い洋画を借りまくった。
夏目漱石、志賀直哉、芥川龍之介や遠藤周作。トリュフォー、ゴダール、キューブリックにスピルバーグが友達である。
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