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1.偶然か必然か
とにかく、鳴海仁くんに抱いたインパクトが絶大だったからだろう。
一週間のうちに四度も顔を合わせる機会が重なり、私は彼に不思議な縁を感じた。四度。いくらなんでも多すぎる。これは偶然なのか、必然なのか。
一度見たら忘れない、そんな外見をした彼との出会いは、火曜日の小児科帰りに訪れた。
四歳の息子の、丸くやわらかい手をきゅっと握り、私は下行きのエレベーターに乗り込んだ。数字の1を押したところで、ばたばたと駆ける足音を聞いた。
「わぁーっ、まってまって、乗りまーす!」
閉まりかけのドアに向かって、若い男の子が駆けてきた。慌てて“開”のボタンを押す。ガタンと狭い箱が揺れて、声の主が乗り込んだ。
一瞬、外国人かと勘違いをした。私の右手を握る息子の手にも、ぎゅっと力が入った。
白っぽく明るい金髪に染めた彼と目が合った。カラーコンタクトをつけているのだろう、その瞳はグレーに染まっている。
襟ぐりが広くあいた丈の長いTシャツを着ていて、肩には黒い大きな鞄を提げている。細いチェーンにつながったリングのネックレスが揺れた。
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