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緩やかな遊歩道沿いにある古いマンション。建物を囲むような紅葉の木々が色づいていて鮮やかだ。
「11月ももう終わりか。あっという間だな」
高校教師になって7年ほど。今日は今年の3月に卒業した佐野美和が一人暮らしする家へ遊びにやってきた。
卒業生とはいえ、女生徒の家に入るなど本来あり得ないのだが。佐野の友人で俺の従兄弟でもある倉木翔を通しての親交が今も続いているのだ。
(聡くん、今度の日曜って暇か?美和の家で美和と瑠璃がカレー作ってくれるんだけど来ない?住所は楓町の……)
翔から届いたメールをもう一度確認してから、目の前のインターフォンを押す。
ちなみに瑠璃というのはうちの高校の3年生である宮野瑠璃。フランス人のハーフで翔の彼女だ。宮野と翔は初心ながら相思相愛で、俺もその微笑ましい様子を密かに見守っている。
「聡くんいらっしゃい!時間通りだな」
「な……」
玄関先で俺を出迎えたのはなぜか翔だった。しかも上半身裸で首にタオルなど引っかけている。
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