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昇降口はシンと静まり返っていた。午前休校だから誰もいない。
どうやら雪による遅延らしかった。シンクロできなかった今日はきっとついてない。告白もうまくいく気がしない。昇降口に着いたときには膝から下は泥だらけになっていた。汗かいて体は蒸れているし、髪もぐちゃぐちゃだし。そういえば昨日の子はメイクもしていたし髪もきれいにまとまっていた。
やっぱり告白するなという神の思し召しかも。
帰ろうと振り返るとそこには人がいた。心臓が止まるかと思った。春田だった。いつものやわらかい笑顔を浮かべて。まるで私がいるのを分かってたみたいに。
「おう、斎藤。お前も来たのかよ」
「うん。電車は?」
「遅延しそうだったから1本早いので来た。斎藤は?」
「自転車じゃ危ないから徒歩で。っていうか、どうして来たの?」
「それはお前もじゃね?」
「まあ、そうだけど」
「よかった。なんか、お前だけひとりで来てそうな気がしてたから。斎藤ひとりにしてたら悪いかなって」
「そんな気を遣わなくても大丈夫だし」
「いや……俺が斎藤と一緒にいたかったから」
「春田?」
「教室行こうぜ」
いつものように靴をポンと置いて上履きを突っかける春田のあとを急いで追う。
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